d r o p s .
  しいて云うならばはんぺん  
... 2002-10-23  
関心空間」で天高く舌も肥える秋を綴っております。
美味しいことはいいことさー舌もさることながら目も耳も肥えたいさー。
ねえ何が食べたい?ねえ、あなたは何がすき?
    
... 2002-10-22  
虫眼鏡で探しても見つからない処だから「ねえねえ」
還るのは木霊ばかりで霧と共に消えてゆく
「ねえ」声は大きすぎたかしら
「ねえねえ」
だから耳元へ囁いたつもりなのに「ねえ」
砂粒のように零れ落ちて波がさらってゆく
「ねえ」声が小さすぎるのかもね
「ねえねえ」
戻れないわ「ねえ」
夜の湖は怖いのよ「ねえ」
境界線がみえない
    
... 2002-10-21  
「痛。」
指を咥えて雨に濡れた窓を睨む。切ってしまった。キャベツの芯へ立てたつもりが人差し指の第一関節に沿って刃が入ったのだ。
朝はせわしい。手相でいうところの月丘辺りを頼りに支度を続ける。ぽとりぽとり音がしている。流しの方へ向けた指先から血が滴っているのだ。
玉子とキャベツを軽く炒めて白だしで味付け。作り置きの蓮根と凍み豆腐の煮物は火を通せばいい。梅漬など漬物をいくつか冷蔵庫から出す。ご飯とお味噌汁をよそったところで、指先をテッシュで強く押さえて祖母を呼ぶ。

いつも通りの食卓を背にお湯を沸かしている。プレスした苦いコーヒーを飲むのだ。たとえ血を舐めた朝でも。

赤く染まった流し台へ蛇口を勢いよく開く。「大したことじゃない」
流される音も雨音にかき消された。
    
... 2002-10-19  
カラーリーフをメインに・・・隙間にはアリッサムを全て色違いで、紫・ピンク・白、なんだか落ち葉に見えなくもないわ、うん。

昼下がりに茶色の浅鉢を抱えて花苗を押し込んでいる。外出し程なく雑事を済ませホームセンターに寄ったのだった。用足しの道すがら「秋植えカーデニング大量入荷」のPOPに気を惹かれていたのかもしれない。
苗を見るのを楽しんでいる。大抵は母と誘ったり誘われたりして行くのだが「寒いからね、花は、時期がね・・・」の母の自制の独り言を僕が聞こえないふりをするわけにもいかず、秋になってからはピオラの寄せ植えを一つ作っただけだった。来月も中頃になれば母は真剣な顔で笑ってシクラメンの鉢を抱えてくるのに。

もう少しもう少し・・・ううん、ちょっとだけ。

苗の前を覗き込んでしゃがみ込んでいったりきたりしている間は病み上がりの身であることも忘れて嬉々としている。百花繚乱苗が肥えゆくことを空想しながら。たぶん今は身に着けることより根を付かせることのほうが楽なんだろう。

オレンジ、ゴールド、グリーンシルバー、イエロー。じゅうぶんカラフルだよ。

原稿箋が欲しかったことを思い出し、片手に紅葉山のミニチュアをぶらさげて文房具屋に寄った。昼食がまだなのでお腹がなる。鰯雲を仰ぎながら家路を急ぐ。
  2002年10月11日 Fri  
... 2002-10-12  
黄色い椅子の上で仰向けになったら転げそうになるほど気持ちよくって
つま先を伸ばせば届くかもしれない
どこまでもおんなじ水色の空は

人気が無ければ冷暗所となり得るキッチンに朝晩ストーブが点った。秋だ秋よ。

繋がったり繋がらなかったり、繋がらなかったりしていたネットワークが今日に至って断線してしまう。ネット会社のデンキヤさんにきてもらい復旧した時には日は既に翳っていた。

アンシンするのパスワードは違う処でアクセスできるかどうか
    
... 2002-10-07  
「ひっくひっくひっく」「ひひっくひっく」

しゃっくりが止まらない。「ひっく」
鯰が一匹暴れている。腹の底の井戸の奥で反響して横隔膜をぬるりぬるりと刺激する。「ひっくひっくひ」なだめすかしながら気をひいて、見ると自意識の髭がてらてら蠢いているじゃあないか。嘲笑ともつかない鳴き声を立てはじめそうだ。「ひっくひっくひっく」プライドの奥から出て来れない情ならば金銀絢爛色とりどりのレゼーレージーステッチで心の淵に縫い付けてしまえ。「ひひっくひっく」「ひっくひひ」合うこともすれ違うこともないのだから。

「ひひひひっくひっくひひひひひ」
    
... 2002-10-06  
雲の流れに揺れる梢へ陽光の下の影へ闇が落とす夜露へ物語を届ける冒険をするのさ。
あなたの処へ耳を澄まして。
  2002年9月21日 Sat  
... 2002-10-01  
春一番で新芽を葺く庭の沙羅の木の葉は連日の10℃以下の冷え込みで秋一番に紅葉し始める。たわわに実った渋柿もほの黄色く色づいてきた。まるで地平との平行線をくっきりとなぞるみたいな飛行機雲とペイルスカイ。北北西の風に乗って途切れ途切れに聞こえる小学校の運動会のメガホンの声。
「しろアンカーにバトンがわたりました」

入道雲と鰯雲が混在する空の下で頭を垂れた金色の稲穂をみたこと。夏の間中可憐な濃桃色の花を咲かせていた百日紅が秋雨と共に厳かに花弁を散らせたこと。冷たい雨にうたれながら飛んでいた椋鳥が欅の木に包まれ雨宿りをしていたこと。
窓から眺める無限に四角い日常を閉じこめたいのかな。

「ピィヒョロロゥ、ヒョロロゥ、ピィ」
夕方、鳶の鳴き声を聞く。
「鳶が輪をかいて飛ぶ下に死人が出るんだよ」鳶の笛を合図に家に飛んで帰った子供の頃を思い出している間に、鳶はいなくなった。何処の空で回っていたのか、もはや知る由もない。

スピッツの新譜「三日月ロック」を聴いている。マサムネワールドは普遍だ。背中の瘡蓋をなでたつもりが爪に引っかけてしまった。血が薄く滲む。
    
... 2002-09-19  
これからニッキをPalm機で書いてマシンに転送することに相成ります。眠る前に見る夢も今見た夢も書き留められる。これは楽ちん。
まとめてUPということも考えられますね。使っているCGIでは日付の入力欄がないのですが、さてどうしましょうか。


すごくびっくりしたんだ。荷物の中にすごいものが入っていたんだもの。すごくうれしかった。
みんな枕元に置いてあるよ。
    
... 2002-09-13  
昼と夜の間に潜む黒い翳よりも気味の悪いもの。「我が我が」と蝿の如く忍び寄るホモサピエンス。
    
... 2002-09-10  
小学生の頃の夢「本屋さんになりたい」

秋風が追い風になって、soupooh店長の「Hey diddle!」本屋さんをひっそりとオープンしました。
どんな本を陳列しようか迷いましたが、過去を追っていくとキリがないので、これから読んでいく本をご紹介していきます。海外作品の翻訳本を好んで読んでいますが、日本文学もそれなりに読んでコメントをしてありますので、このナダニッキに訪れてくださる皆様、時間が許されたら覗いてみてください。
なにより僕が楽しんでやってますので・・・
    
... 2002-09-08  
くずれそうな現実の空が見たくて、日曜美術館でマグリットの画を見ている。
積み木の空。鮮烈な水色に真白な雲が落ちている無音の空。
謎は現実の中にある―あたりまえにある不思議と戯れる。

明治以来の最高気温を記録していた九月の太陽も落ち着いてきたようだ。ラベンダーグレイの空から薄日が零れている。今日もたぶんいつしか雨が降るのだろう。
薄紅色の百日紅が満開だ。三ヶ月前から咲き出した花が今まさに満開なのだ。

Mが金沢へ行ったついでにスターバックスで買って来たカフェインレスコーヒーを楽しむ。プレス式抽出の風味は力強く美味いから一日一杯でも十分だ。マグカップに半分の量を味わった後、ぬるいミルクを半分注ぎ込む。そして甘いほろ苦さをゆっくり味わいながら、恋人の淹れてくれたカフェオレの味を思い出している。
うつむき、カップの上で満足そうに瞼を閉じて、潤む瞳を悟られないようにする。
    
... 2002-09-02  

八月の送り盆を終えてから墓石の下に納骨堂を設置してもらっていた。曾祖母の三十三回忌と祖父の二十七回忌を迎える年にやりましょうと計画されていたことだ。
工事の始まる前に魂抜きという儀式をし、骨壷のまま埋められていた二体のお骨をお寺にあずけておく。今朝は出来上がった後の魂入れの儀式だったのだ。
骨壷の蓋を開けた途端、肌の表面に纏わりつく濃い気配を感じる。土に返すためにお堂の中へ骨を粛々と撒く。あるいは父が撒くのを眺めている。骨は何故か湿り気を帯び、滴がしたたるほど濡れていたのだった。尼さんの読経の中、線香の煙と供した水が早朝の陽の光に焚かれてぬらぬらと揺れ立ち拡散していくのを見る。気をやられそうになる。
ずっと此処にいたのだ。やっと草葉の陰に隠れていけるのだろう。


家に戻ってひと休みした後、長野県知事選の投票にでかける。
今回の選挙にいたる経緯で、閉鎖的かつ保守的な"信州人"と呼ぶ気質を公にさらけだすことになってしまったわけだが、県民は"何か"を望んでいるんだという結果にささやかな希望をもつ。前知事の再選が有意義なチャンスになることを願う。


Mに、仕事の確認用に使っているだけのiMacへ新OS「Jaguar」をインストールしてもらった。これは・・・絵が綺麗色が綺麗動きが綺麗!なんて楽しいんだ。
まいったよ。


先月は奇妙な夢ばかりみていた。死の影が寄り添う物語を遠くから眺めている、なまなましく既視感のある夢ばかり見やる。暑さにやられたのだ。そしてワルツを踊る夢(目覚めた時には股関節を寝違えていた)。
    
... 2002-08-28  
待ちあぐねた資料は一日遅れて宅配便で届いた。ひとまず手元にあることに安心する。
週明けに連絡を入れたところ、改めてスケジュールの調整をしていただけるという。ひと安心する。

朝晩の涼しさに寝冷えでもしたのだろうか。軽く熱が出てしまっていた。二日間ほどだるくて仕事にならなかった。あるいは頭の中だけで作業をしていた。うなされたのは熱のせいなのか開き直れない性質のせいなのか定かではない。
恋人が僕以上に気遣い察してくれる。そして祈ってくれる。うるうるする。
寝込んでいられないことだけははっきりしている。

幸水梨が届く。箱から漏れる独特な甘い芳香で「食べたい」と思った。何かを食べたいと思うなんて久し振りだ。
一つ、水道水できゅきゅと洗い、皮を剥いてほおばる。瑞々しい。甘くておいしい。

永い骨の杖作りをさりげなく手助けしてくれる人々がいるのだった。本当にありがとう。
    
... 2002-08-22  
緊急の打ち合わせが入ったのは昨晩の七時。今日の打ち合わせは三〇分遅れの午後四時半からとなる。しかし、プライオリティが一番高いのは、他の、待っている資料だ。明日じゅうには届くという。明日も打ち合わせるかもしれない。明日じゅうって?
待っている時間に、この待ちあぐねているほんの三〇分の間にニッキを書く。打ち合わせの資料は手書きで間に合わせた。再生紙のレポート用紙ごと持っていく。いざとなったらこのまま破いて渡そう。場所は歩いて五分ほどだ。まだ化粧をしていない。

風は強いが、陽射しにはまだ攻められる。
ただ、空だけが秋を受け入れて。
ぽっかりと高く浮かんで。
    
... 2002-08-19  
本日朝一番での入稿案件が未明に出来上がったので、そのままパソコンの前でぼんやりと座り込んでいる。
椅子の上に中身は豆で出来た人型が、くたっと落ちているようにみえるだろう。仕事の直後はハイテンションだから、眠れるまでに少しばかり時間がかかる。大抵は横になって本を友に、夢の中へと落ち込むのだが。

藍に白のハートが細かく散ったちりめんのお手玉で遊ぶ。小豆の小気味よいノスタルジックな音。
ひとつふたつみっつよっついつつ。ひとつふたつみっつよっついつつむっつ。ひとつふたつみっつよっ・・・

半年は会えない日々を数える。恋しいけれど寂しいと思わないことを考えていた。いまだかつてない穏やかなこころを。
どこかの決まった場所に、一日のすこしでも居てさえいてくれれば笑っていられるのか。
二人だけのじゃあねの言葉を交し合うだけで笑っていられるのか。
    
... 2002-08-17  
★読書メモ
ガルシン「あかい花 他四篇」を、ずきっと読み終わる。訳者あとがきの―チェーホフの魔のごとき現実直視の力によって受け継がれる―という一節に魅入られ、続けてチェーホフを手にした。
短篇集の「たいくつな話/浮気な女」だ。つらつらと読み進むうちに、たいくつな話をたいくつでないと思いはじめている自分に気付き、「まいっちゃったなあ」。ひとまず枕元に積読。
暑気当りも佳境に入った週は、サン=テグジュペリ「人間の土地」をうつらうつらと読了。

見上げればいつもとおんなじ星が光り、見下ろすと街の灯も星のように瞬いている。空からも地からも遠い場所で、翼の腕を持つやじろべえになって、すーいすういと飛んで行く。
ちっぽけなのは一目瞭然だし、危なっかしいのもわかっている。気紛れな風という見えないものを、経験な敬虔な魂で見極めなくては、たちまち砂漠に不時着してしまう。
尊大な星の大地に在る必要なもの全てと、少しずつ少しずつ仲良くなって、すーいすういと飛んで行く。

(高いところが苦手な僕はどうしたらいい?)
堀口大學訳の"サン=テグジュペリ語"を満喫したのだった。

今月号の文藝春秋に掲載された吉田修一「パークライフ」を読み始める。灰汁がほとんどない(隠しているのか、もともと無いのか)人と人との関わり。必要は絶対でないのかしらと考える。
情景やセリフのセンスに感じ入ってもいる。薄い半透明のオブラートに包まれた"感覚"を飲み込んでいくようだ。
じわじわと先行きが気になりだす物語だ。
    
... 2002-08-15  
二日間は眠れないが三日目にはなんとか眠られる。二日間は食べたくもないけれども三日目ならお腹が空いてくる。
肩で荒い息をつく時には、時間の割り方を思い悩む。或る日それにも慣れてしまう。一日が二五時間あったとしても、平均的"まっとう"にはならないだろう。
「そこかしこでおもしろいことだらけ」と、昼の空を眺めている、夜の月明かりを浴びている。

白樺の幹皮の迎え火を焚いた晩、停電する。
僕は仕事にいそしんでいた。ぼつぼつと、恋人とトークもしていた。突然、ひゅん、と全てが闇に包まれたのだった。
糸が切れた凧が空に消えるが如く漆黒の闇に沈む。作業もマシンも僕の部屋も、そして恋人の声も僕自身も。
目が慣れるのを待とう、ブレーカーが上がってしまったのだろうか、ああなんて黒いんだ、月もでていないのか、とにかく灯りを。闇底を彷徨いながら考える。
感をたよりに動き出そうとした途端、ひゅんと、白熱灯の白さに目が眩んだのだった。闇は何処へ、すぐそこの彼方へ。

明くる朝はリセットされた電化製品を設定し直した後、仏壇に線香を灯してお願いする。
「おじいさま、ひいおばあさま、ご先祖さま。いたずらはしないこと。」
「ウートートー、アートートー(南無南無)」
    
... 2002-08-11  
泣いている僕のあごを持ち上げて、正面から僕の両手をにぎって、
「知らない昔の君も。今の目の前の君も」
空虚ごと感じようとする恋人を好きになる。ごく自然に、好きになる。
胸に変わらないものを抱いたまま、抱えたものは浄化されて、僕は変わっていくんだろう。恋人だって、たぶんきっと。

「もっと前に出会えていれば、そんな思いは、させなかったのに」
もしもの約束をする男を、僕は愛することができなかった。たとえ抱きしめてくれても。
    
... 2002-08-05  
「たっくんがおしっこしてる」
お向かいのお家。子供たちの喚声の中心は、庭におかれたビニールプール。
ちっちゃな水色の、ちょっとしょっぱい海だね。

油蝉の声を聞いたのは、翠葉繁れる月がはじまった日のことだったか。一と月も前には、毎年聞きなれていた南部鉄の風鈴が父の手からすべり落ち、庭石に当って割れる音を聞いたのだ。渋くいとまごいを忍ぶ沈んだ音だった。
それ以来、気が付くと、夏の音を探している。
あそこの電線に一羽のキジバト。
「ホゥーホーー、ドゥルードュルーー」「ホゥーー、ドゥルドュルーー」

「おーおーー、どろーどろぅーー」「んー・・・、どろどろー・・・」
僕が何度真似をしてみても、お化けにしかならない。

ヘビースモーカーのガリバーが小人の国を旅行して
ぷっかぷっかと
煙草を飲んでいるんだ
ゆっくりと腰をあげ
煙管で靴の踵を二回たたく
いつもの癖
次の場所へ旅立つ合図だよ

紺碧空に真白い入道雲を眺めて、乾いた風に汗ばんだ身を撫でられながら、うとうととうたたねをする。

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